●執筆再開に関する「言い訳」

 06年2月、突然思い立って、新作漫画を描き始めた。
 全8頁のギャグ漫画「紅楼夢飯店」である。実に「真田虫太郎」以来、10年振りの執筆ということになる。

 さて、そもそもなぜ急に、再び漫画を描いてみる気になったのか? 別に、あの当時の情熱がメラメラと再燃したからではない。また、なにかしら素晴らしいアイデアを思い付いたワケでもない。正直に告白すると、ただ単純に「ブログ・ネタ」の一部として描いてみようと思い立ったに過ぎない。
 その当時、わたしは定期的に、というよりほぼ毎日のようにブログを書いていた。
 そもそも、ブログを始めたきっかけは、ただ単に、このサイトの「更新履歴」を書くためだったのだが、徐々に色んな人からコメントなども貰えるようになり、ついつい調子に乗って、このサイトとは直接関係のないような話題だろうがなんだろうが、手当たり次第に書きまくるようになっていった。
 しかし、同時に、慢性的な「ネタ不足状態」にも陥っていた。
 そこで、ついうっかり(?)「漫画を描きます」などという“宣言文”を記事にしてしまったのだ( 2006年2月4日付Blog 参照)。それはまさに、窮余の一策だったと言ってもいい。よっぽど他に書くことが無かったのだろう。

 こうして、わたしは「ヤブヘビ」的に、漫画を描き始める羽目(?)になった。
 しかし(…というか、「やはり」というか)、わたしはすぐに、ひどく後悔することになる。というのも、まったく筆が進まなかったからだ。
 まず、さっぱり絵が描けなくなっていた。
 わたしは、どこかの学校に通ってデッサンの勉強をしたこともないし、また、どこぞの漫画家のアシスタントをした経験もない。つまり、まったく基礎が出来ていないところを、なんとなく「騙し騙し」漫画を描いていたワケである。しかしこの10年間で、その「砂上の楼閣」は完全に崩壊してしまっていた。
 結局、今回の新作は、その大部分が「Photoshop」のお世話になっている。実際、原稿に向かって漫画を描いてる時間より、Mac上で「ちまちま」と修正している時間の方が長かったかも知れない。
 しかし、まったく筆が進まなかった原因は「絵」に関してではない。
 一番の問題は、その「内容」にある。

 そもそもこの「紅楼夢飯店」は、実は10年前に考えたアイデアの「焼き直し」なのである。
 なぜこの作品を選んだかというと、たった8ページのギャグ漫画だし、比較的簡単に描けるんじゃないかと思ったからだ。なにしろ10年ぶりのことなので、「リハビリ」にはもってこいの手軽さだと思ったワケだ。
 ところが、なんと完成までに9か月もかかってしまった。(!!)
 もっとも、その9か月のうち、ちゃんと漫画を描いていた期間は、その半分にも満たなかったと思う。机の上に描きかけの原稿を放り投げたまま、どうしても「やる気」が起こらず、長い間ほったらかしにしていたのだ。
 というのも、わたし自身、「ギャグ漫画」を描くことが年齢的に限界だったからだ。
 10年前なら喜んで描いたかも知れない。しかし、今さら「いいトシしたおっさん」が、なぜ「こんなもの」を描かなければならないのか? しかも、10年も前に考えたような「時代遅れのギャグ」を、さらに、なんらかの理由で結局原稿化しなかったような「ボツ作品」を、どうして今さら執筆するのか?
 その“大義名分”が、自分のなかにどうしても見出せなかったのだ。
 事実、後半部分はワケの分からない「義務感」だけで、「やっつけ仕事」のように仕上げてしまった。まあ、どうにかこうにか完成に漕ぎ着けただけでも、わたしとしては自分で自分を誉めてあげたい気分である。

 しかしながら、「もう二度と描かない」などと言うつもりはない。
 まあ、「ヤブヘビ的に」「ついうっかり」再開してしまった執筆活動ではあるが、これもなにかの縁(腐れ縁?)だと思うし、これからも地道にのんびりと続けていこうと考えている。
 とりあえず、もうギャグ漫画は描かないかも知れない。これからは年相応に、「いいトシしたおっさん」らしく、「中年の中年による中年のための漫画」を描いていく所存である。

2006年11月 記


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